Egretta 開発ストーリー 2
この大自然の中だからこそ
Egretta は生まれたのだと思います
- 開発での苦労や工夫した点について
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父から譲り受けた知識や感性を大事にしています
最近亡くなった私の父は、長年オーディオに関わる仕事をしてきました。そのため私は父から譲り受けた知識や感性を大事にしています。特にオーディオは単なる家電ではなく、ポリシーが大事です。そこを安易に崩すわけにはいきません。例えば TS550 はアンプを内蔵しているため、既存の TS1000 をただ小型にするのだけではなく、納得がいく音が出るまで何度も作り直しました。
山本武司 生産部・開発技術課 課長Egretta の開発は技術者である渡辺が担当し、それを製品化するのが私の仕事です。特に回路の部分を担当しました。
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試作と手直しを何度も繰り返しました
私はデザイン画が出来てきて、それを加工できる図面に置き換える作業を担当しました。デザイン画ではここは何ミリ、という細かい寸法の指示があります。そのデザインを崩さず忠実に図面に起こしたり、3Dと2Dを書き換えたり、といった作業が大変でした。また、鋳造にはロストワックス製法を用いたのですが、試作と手直しを何度も繰り返しました。しかもロストワックス製法ではできないアルミ部分の製作やパーツの組み込みなどもあり、想定通りにいかないときは急遽一部の部品を交換するなど、いろいろな点で苦労や工夫があります。
石橋一二三 生産部・副部長Egretta TS1000 の開発から部品加工の図面作成を担当。それまでは液晶の設備、メンテナンスや機械の設計など。
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自分たちでブランドを作り上げる難しさと面白さ
これまで我が社は受託加工がメインでした。Egretta に関しては自社ブランドで製品開発から製造販売までをトータルで行うことになり、いろいろな 課題が発生します。毎日関係者のみなさんと会議を夜遅くまで行い、課題を一つ一つ解決していきました。ただ要求された通りに作ればよいというのではなく、自分たちでブランドを作り上げる難しさと面白さがありました。
本田敏夫 生産部・部長生産技術や品質保証など全般的な管理業務を担当。それまでは現場の製造一筋。
- 開発過程で印象に残っていること
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山本
まずはオーディオ製品としての音質が第一デザインをきちんと形にしていく上でのせめぎ合いは常にありました。もちろん高いデザイン性やインテリアとしての美しさは大事です。しかし私たちが作っているのは単なるオブジェではありません。まずはオーディオ製品としての音質が第一です。特に内部の構造が音質に大きく影響を与えるため、石橋が試作したものに対しても音質が満足できないときはダメ出しをしたこともありました。性能面での妥協はできませんので。
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石橋
「本当に可能なのだろうか?」ということの連続あらゆることが試行錯誤の繰り返しでした。デザイン画が先にできていて、部品を中に当て込んでいくと、デザイン通りに部品がうまく配置できないことがあります。例えばスペースが狭くネジのタップを立てられないところを何とか立てるようにする、といったことです。他にも線が入ってしまうのを消すには、溝は、穴は・・・と、「本当に可能なのだろうか?」ということの連続でしたね。他にもデザイン上の制約が多く、例えばスピーカーの外周とアルミのヘッドが3mmしかないところで組み立てなければならない、ということがありました。狭いためネジ止めも接着もできず、最終的には2mmしかないところに溝を掘って線を通しました。
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本田
限られた時間で焦りもあった私は全体の統括として、短期間でこれだけの製品を仕上げるのが本当に大変でしたし不安もありま した。限られた時間で焦りもあったのですが、こうして設計・製造・販売とこぎつけることができたのはみなさんの苦労があってこそですね。本当にみなさんよくやってくれました。
- これまでの仕事と違う点
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山本
自分たちが製品、そしてブランドを作っている私は以前、ある大手メーカーに勤めていました。偶然 Egretta のことを知り、それまでは地元でこんなことをしている会社があるとは知りませんでした。このブランドなら私のオーディオの知識や経験が活かせると思い、人材の募集もしていないのに履歴書を送り、採用されました。以前の勤務先では自分は一人の社員に過ぎないという認識でしたが、今では「自分たちが製品、そしてブランドを作っている」という想い入れがあります。さらにそれが全国展開したり、グッドデザイン賞を受賞したりと大きく広がり、とても嬉しく思っています。
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石橋
これまでにない体制・チームを作り上げた当初、回路に関してはなかなかうまく行かず、開発が止まってしまったことも一時期ありました。そこで山本が入社してきて、開発作業が急速に進展しました。これまでにない体制・チームを作り上げたことも従来の仕事とは違います。
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本田
これまでの業務領域を超えたことへの挑戦これまでは受託生産が中心でしたので、技術には自信がありました。しかし自社ブランドとなると技術面だけではうまく行きません。営業や開発、購買といった組織体制を構築し、私に限らず全員がこれまでの業務領域を超えたことにも挑戦する必要がありました。
- 完成した Egretta の製品について
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山本
心に訴えかけるような音作りを大切にしていますデザインが素晴らしいですよね。特に TS1000 は、ぱっと見てスピーカーをイメージさせない形をしていて、インテリアとしてもいいですね。だからサイズはけっこう大きいものの、音質も無指向のさりげない音なので、家の中に置いて邪魔にならないと思います。もちろん取っ掛かりはデザインでいいのですが、デザインに負けないような音になっています(笑)。オーディオについてはこれまで30年取り組んできたため、耳にはそれなりの自信があるつもりです。もちろんいい音というのは人それぞれの感性によりますが、いい音楽を聴いて涙を流すような、心に訴えかけるような音作りを大切にしています。
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石橋
どんなタイプの部屋にも合うデザイン非常にいい音だなと思います。特に TS550 はスリムなのでスペースを取らないですし、値段的にも手が届きやすくなっています。どんなタイプの部屋にも合うデザインではないでしょうか。
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本田
結果としてそれがデザインとしても秀逸になっているEgretta は非常に「機能美」があると思います。音の出方を解析した結果、この形になったわけですが、結果としてそれがデザインとしても秀逸になっていると思います。ガラスのリフレクターも単なる装飾ではなく、音を前面に出すという機能なのですが、デザインのいいアクセントになっているのではないでしょうか。
- 「ものづくり」の観点から見た開発エピソード
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山本
人が丁寧に組み立てたもの今、ほとんどの工業製品はロボットが組み立てています。しかし、TS1000 は人の手によって作られています。見る人が見れば、人が丁寧に組み立てたものと、流れ作業でロボットが組み立てたものは違いがわかります。先日、ある自動車メーカーの商談会に Egretta を展示しました。すると来客された自動車部品メーカーの方のほとんどが、スピーカーとしてよりもまずアルミの造形に興味を持たれていました。「ネジをつかわずにこの部分を一体成型するなんて、すごい技術ですよ」とお褒めいただきました。
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石橋
左官職人のような手作業の技術TS1000 に関しては、これまでも失敗作が多数あります。特に難しいのが漆喰です。下地処理がきちんと出来ていないと溝やでこぼこ、気泡ができてしまいます。満足する品質のためには、左官職人のような手作業の技術が求められました。漆喰は塗りたては柔らかく、乾燥するとわずかに縮んでボディを締め付け、その結果音がよくなります。この効果は狙ったものではないのですが、漆喰にこだわって正解でした。
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本田
所有する喜びにもなる他にも操作の一つ一つにこだわっています。例えば TS1000 は電源を入れるとスイッチがふわっと明るく付くようにしています。普通の家電ならば、 スイッチを入れた瞬間にぱっと点灯します。もちろんこういったことは音質や機能には直接関係はないのですが、使う人の気持ちや場面を考え、スイッチの明かりの動きひとつにも気を配りました。それが所有する喜びにもなるのではないでしょうか。
- 今後の展望
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山本
この北広島から、世界にものづくりを発信していきたい一生涯、オーディオに関わっていきたいです。会社のため、地域のため、お客様のために、思いを込めた製品を作っていきたいと思っています。日本から、しかもこの北広島から、世界にものづくりを発信していきたいです。これまで東京や大阪で仕事をしてきましたが、この大自然の中だからこそ Egretta は生まれたのだと思います。お取引先やお客様を工場に案内すると「こんな山の中でも素晴らしいものが作れるのか」と驚かれます。これからも心に訴えかけるオーディオ製品を作っていきたいです。
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石橋
自分たちがゼロから作り上げたブランドEgretta に関わって初めて取り組む業務や今までにない苦労も多かったのですが、自分たちがゼロから作り上げたブランドがこうして世の中に出て、お客さまに使っていただけるというのは非常に嬉しいですね。これからもずっと Egretta に取り組んでいけたらと思っています。
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本田
ものづくりに終わりはありません当社は素晴らしい製品を生み出す人や技術に恵まれています。これからも私はそういった人や技術を支え、品質の管理や新商品開発に取り組んでいきたいと思います。現行の製品はもちろん素晴らしいのですが、ものづくりに終わりはありません。我々としても気を緩めず、新しい価値を生み出してお客さまに更なる満足と感動を与えることができれば嬉しいですね。
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